ヒトゲノムの解読とHIVなどのウイルスとの関連
もう少しDNAについて話しましょう。
染色体の中にDNAがあることは皆さんご存知ですね。
人間のゲノム(最低必要な遺伝子群)の解読が今年完了しました。
これで人間のDNAの配列順序が完全に判明しました。
その過程で非常に興味のある発見がなされたのですが、その事実に気付いている人は余りいません。
暗号化されている私達の遺伝子情報は最初の人間から始まって、今までずっと先祖から受け継がれてきています。
何人の方がご存知か知りませんが、DNAに含まれている情報のうち私達にとって役に立つ情報はわずか一部です。
つまりDNA情報の大半はがらくた同然です。
スライドをお見せしますが、原始的なウイルスを初めいろいろな病原体が人間のDNAに侵入し、汚染し、さまざまな問題を引き起こし、ひいては老化と癌の原因になっています。
このスライドはHIV(ヒト免疫不全症候群ウイルス)つまりエイズです。
エイズはこのようにして人間の細胞に感染し自己複製していきます。
ウイルス自体は人間の細胞と比べると非常に単純で原始的です。
とても小さな粒子です。
遺伝情報は持っていますが、自分だけで増殖することはできません。
つまり自己複製に必要なエンジンも工場もウイルス自体には備わっていません。
これは全てのウイルスに共通して言えることです。
肝炎ウイルスや風邪を引き起こすライノウイルスもそうです。
風邪のウイルスはどうやって増殖するのでしょうか？
ふつう宿主、つまりこの場合は人間を必要とします。
まず人間の細胞に付着してから細胞内に侵入します。
人間の細胞にはウイルスが必要とする遺伝情報があります。
次に形を変えて細胞核に入りそれからDNAに侵入し、DNAという工場を使って自己複製します。
自己複製されたウイルスは再編成された後、そこから出て行きます。
こういう過程を経てHIVなどのウイルスに含まれるDNAが皆さんのDNAの一部に取り込まれ、永遠にそこに居座ることになります。
永遠とは不死を意味します。
百代千代にわたって受け継がれていきます。
だから皆さんのDNAには出所の分からない部分がたくさん存在します。
1万年前の先祖がある種の変なウイルスに感染し、そのDNAがそこに残っているのかも知れません。
普段はそこに残っているだけで特別何もしませんが、ある日何かのきっかけで引き金が引かれ目を覚ますかも知れません。
突然、癌になったりする原因の一つもそこにあります。
人間のゲノムのすべてが判明した今、人類はDNAのどの部分が私達に役に立つものであり、どの部分ががらくたなのかを判別しようとしているところです。
次のページはがんとの関連についてのお話です。
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